Cool Lip
しょんぼりと縮こまるわたしに、でも三上くんは一から…そう言葉通り基礎の基礎から、説明を始めた。


頭がいいのは知っていたけれど、彼は教師としても優れていて、


わたしの知識の曖昧になっているところや抜けている部分を引き出して、土台から積み上げていってくれた。


朝の一時間が、あっというまに過ぎていく。


三上くんはチラッと壁の時計を見て、


「…今日はこの辺にしよう」


つられて顔を上げると、いつのまにか予鈴の10分前だ。


「あの…さ」


わたしがおずおずと切り出すと、三上くんは教科書をしまう手を止めた。


「どうして…わたしに勉強を教えてくれる気になったの?」


真剣な目で見つめると、いつもどおりの冷めた口調で答えが返ってきた。


「君がバカだからだ」


…ごーーーーん…


明らかにがっくりとうなだれるわたしを残して、三上くんはさっさと教室へと戻っていく。


…さっきまでの幸せな気持ちは、なんだったの…?
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