君の僕

車は発進したものの、
会話が見つからない。

何を話せばいい?

そればかりずっと考えた。


だからかな。
見覚えの無い場所に居た事を
私は少しの間、気づかなかった。

「え?ねぇ、ここどこ。」

私の家の周りには
田畑が多いのに
その時車が走っていたのは、
デパート街。

「俺の地元。」

駅近くらしいんだけど、
私が見たこと無い場所だった。

「は!?何で。」

「一々うっせぇ女だな。」

彼が思い切り眉間にシワを寄せるから
もうそれ以上何も言えなくて、
疑問と不安を抱えながら
それでも私は大人しく座ってた。


結局車が到着したのは、
発車から20分くらい過ぎた頃。

大きなマンションの目の前。

「降りろ。」

どこまでも上から目線の彼は、
一足先に歩き出す。

置いて行かれるのが嫌で
小走りで追いかけた。

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