君の僕

携帯が鳴る。

好きなバンドの好きな曲。


｢もしもし？｣

｢今日早く会えんだけど。｣

早く会える…
たったそれだけで嬉しくて堪らない。
恋してたんだな、私。

｢あ、でも今家じゃないや…｣

｢どこ居んの？迎え行くわ。｣

｢えっと…、弘樹先輩の家…？
…って、分かんないか。｣

｢弘樹？関谷弘樹？｣

彩斗の口から思わぬ名前。
フルネーム、合っていた。

｢彩斗知ってんの!?｣

｢俺、誰だと思ってんの。
…まぁいいや。もう少ししたら行くわ。｣

電話が切れ、
先輩の視線に気がついた。

｢今、彩斗っつった？｣

｢え、…うん。
なんかね？先輩のこと知ってた。｣

｢や、当たり前だろ。
鈴木さん俺等のバックだし。｣

…耳を疑った。
私等のバックには、筋の人しかついていない。
ってことは、
やっぱり彩斗は筋の人…か。

｢そっか。｣

正直怖い。
でも、彩斗のことを嫌いになれなかった。