君の僕

親が組の人だ。とか
右翼だ。とか
珍しいことでは決して無い。

私が居た世界の中には、
そういう人が当たり前に居たし
筋の人等とつるむのも
どこか当たり前のような感じもある。


「彩斗も組に入るの?」

「や、親父がさせねぇだろな。」

組の頭張ってる人の息子って
絶対次を継ぐものだと思ってた。

だから、話の意味が分からない。

「お父さん厳しいの?」

「よくね?もう。
親父の話とかしたくねぇ。」

細く、薄い眉を
左側だけピクリと動かす。

「…ん。」

鋭い目を更に鋭くするもんだから、
本当はもうちょっと聞きたかった
お父さんの質問も全部飲み込んだ。


「ここ、おいで。」

足を広げ、私の手を引く。

ソファから立ち上がり、
足と足の間に座ると彩斗は私を抱きしめる。

ふんわりと香るのは、
いつだってブルガリの香水だった。


「ずっと一緒に居ようね…?」

大好きな男物の香水の香りに包まれ
温かい気持ちでいっぱい。

「可愛い。一生大事にしてやる。」

八重歯を見せて笑う彩斗が
どうしようもなく可愛くて、大好きで
私を抱きしめる
男らしい腕をギュッと握った。

< 26 / 87 >

この作品をシェア

pagetop