君の僕
その部屋にずっと居ても仕方ないわけで…
私は何故か、足音を気にしながら
2階へと上がった。
だけど、2階って言っても
こんな豪邸だもん。
1,2部屋なわけが無い。
「彩斗…?」
大きな声を出せるほど、
私には勇気なんか無くて
小さな声で彩斗を呼ぶ。
でも、聞こえるはずない。
半分泣きそうになって、
このまま家を出ようとも思った。
でも、そんな勇気も無かった。
どうしようか、と立ち止まった時
「あぁ。千恵か。ごめんな?」
苦笑いをして、
頬をかきながら奥の部屋から彩斗が来た。
我慢してた涙が、
いきなりドッと溢れてきて
メイクが崩れるとか
場所とか
恥ずかしさとか、照れとか、
全部忘れて彩斗に抱きつく。
「ごめんな」
たったそれだけしか言わなかったけど、
しっかり私を抱きしめてくれた。