君の僕
「…帰ろ?彩斗。」
精一杯抱きしめあって、
私が少し落ち着いた頃
涙は薄っすら滲んでたけど
笑って彩斗の手を握る。
「行くか。」
力強く握り返された手に、
大きな安心感を得た気がした。
玄関を出ると、
時間を見計らったかのように
黒のマジェスタが発進。
「あんま、気にすんな。」
お父さんの車を目で追う私に気づいたのか
グイッと手を引っ張って、
私を助手席に座らせた。
「親父に何も吹き込まれてねぇよな?」
「お父さん…、嫌い?」
彩斗はいつだって
お父さんに関係する話をする時は
不機嫌そうに片眉を上げる。
「あぁ。いつか殺してやる。」
彼の顔に、笑顔なんか無かった。
「冗談…でしょ?」
「お前は気にすんな。大丈夫だし。」
安心させようとしてるのかな。
ゆっくり、優しく、
私の頭を撫でてくれた。