君の僕
美月がシダックスを出てから
彩斗が来るまでの間は
そんなに時間が掛からなかった。
「いらっしゃいませ。」
ドアが開く音とほぼ同時に
店員の声がロビーに響く。
彩斗はフロントとは反対の
ロビーに足を向け、
笑顔で私に片手をあげた。
「今日の髪型、可愛いな。」
「そう?…ありがと。」
ワックスで整えた
無造作なヘアースタイル。
彩斗の好みで良かったな…
「んじゃ、行くか。」
私の手をとって、歩き出す。
「うん…っ!!!」
腕を絡めて、頬を染めた。
この日の車はいつものBMWでは無く
シーマだった。
相変わらずブラックライトは眩しくて
怪しげなフルスモーク。
「いつもの車じゃないんだ?」
「ん?あぁ、これツレの。」
自分の車に慣れてるからかな。
運転し辛そうに見えた。
彼のツレのことなんて、
この時は気にもしていない。
だって、知らなくてもいい事だって
きっとあるはずだし
それに興味もあんまり無かった。
どうせ彩斗のツレだから、
世界が違う人だと感じたしね。