君の僕

彩斗お気に入りのHip-Hopのアルバムが
この車の中でも流れていた。

相変わらずよく分からなかったけど
雰囲気と、メロディーだけは
今もハッキリ覚えている。

13曲入っているアルバムの、
7曲目のイントロが流れた時からだ。
彩斗の携帯が引っ切り無しに
鳴り始めた。

面倒臭そうな顔をして、
何回も掛かってくる電話に
1本1本ちゃんと出る。

相手は皆違うみたいだ。



やがて車は、私の知らない
繁華街のような場所に止まり
彩斗は1人でスタスタ歩いて行ってしまう。

どこかから感じる不気味さと
1人にされる不安で、
一生懸命に走って追いつくのが必死。

「はぐれんなよ?」

「置いてったの彩斗じゃん!!!」

私に面倒臭そうな顔を見せる彼に
ちょっぴり悲しさがあった。


一言で繁華街と言っても
ここは色んな道があるみたいで、
ホスト・キャバ街
Club街
筋の人の遊び場
地元のヤンキーの溜まり場。

彩斗が足を向けたのは
筋の人等が居そうな場所だった。

< 38 / 87 >

この作品をシェア

pagetop