君の僕
抱きしめられた時の、
ふんわりと香るマイセンの匂い。
彩斗の温もり。
…涙がどんどん溢れた。
今、隣に彩斗が居ることが
どうしようもなく嬉しくて。
どうしようもなく不安で。
「悪かったな。」
「いえ、全然大丈夫っすよ。」
抱き寄せられたまま、歩き出す。
「可愛いな、お前。」
車の中でされたキスに、
私は幸せだ。と思えた。
彩斗の過去の恋愛が
どれだけ悲しいものだったとしても
私には、関係ないもん。
…ね、彩斗。
「独りにしないでね…。」
車で呟いた一言を、
彩斗はどんな顔して聞いたんだろう。
嬉しいのに、寂しくて。
幸せなのに、不安だった。
隣に居てくれる彩斗が、
いつか居なくなってしまうことが
どうしようもなく不安だった。
私は亜美ちゃんとは違うし、
薬だって誘われていない。
でも、だから不安だった。