君の僕

首、胸元…と
彩斗の唇が移動していく。

恥ずかしいのと、緊張で、
私はまた、泣きそうになっていた。


ふんわり香る、
マイセンとワックスの匂い。
…あと、私が好きな香水の匂い。

彩斗を中で感じた時、
確かに幸せに満たされた。

彩斗で良かったと
確かにそう、思った。


「ん…ッ…」

小さな、小さな声が漏れる度
小さく笑って、
優しく唇を重ねてくれる。

力いっぱい抱きしめあって、
精一杯の幸せを感じた。



事が終わり、私は放心状態。

彩斗はそんな私の隣で
煙草をふかしている。

「一生隣に居ろよ?
他の男になんか目向けんなよ?」

ワックスもスプレーも
一切使ってない、ノーセットの髪を
まるで猫でも撫でるかのように
優しく、優しく、撫でる。

「ん…。」

筋肉で硬い、彩斗の腕を
同じ様に撫でながら、

私、本当に幸せだったと思うんだ。

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