君の僕

大きな、熊みたいな人。

「久し振りだな、彩斗。」

「あぁ、川口さん。
…また太りました?」

「嫁の作る料理、美味すぎてな。」

「結婚してないじゃないっすか。」

「ま…、そこは気にせずにだな…。」

ふたりの会話に、思わず大笑い。
川口さんはそんな私を見て、
同じ様に笑っていた。

「彩斗の彼女か?」

「あ、えと…はい。」

「千恵っつーんすよ。」

何だか少し、照れくさい。

「千恵ちゃん。これやるよ。」

差し出されたのは、
有名なスナック菓子がいっぱい詰まった
お菓子のパック。

「えっと…、ありがとうございます。」

戸惑ったけど、
一応受け取っておいた。

「それ絶対後で食べようとしてましたよね。」

「お前が太ったとか言うから、
可愛い彼女にあげたんだろーが。」

それからしばらく、
ふたりの会話に耳を傾けては
爆笑した。

一見、怖そうな川口さん。
でも中身はお父さんみたいな人だった。

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