君の僕

「今、どこ居んの?」

「美月の家のすぐ近く…なんだけど、
分かんないよね。」

「近くに何あるか言ってみ?」

優しい声にドキリとする。
周りを見渡し、見える物全部を伝えた。

「ファミマと、大きい病院…?
市民病院って書いてある。
あと…、ゲーセンとかあるよ。」

「あぁ。市民病院のとこなら分かるで、
ファミマで立ち読みでもしとけ。」

「え?あ、はーい。」

電話を切り、ニヤけた顔を手でおおう。
少ない情報で場所を分かってくれたことが
物凄く嬉しくて。

…いや
いつも通りの彩斗で居てくれたことが
どうしようもなく、嬉しかった。


ファミマに入ると
言われた通りに雑誌コーナーへ。

愛読しているギャル雑誌の
メイク特集、ダイエット特集を読んだり
ギャル男雑誌の好きなモデルを探したり。

待つ時間が、相当長く感じたのはきっと
彩斗に会いたくて仕方なかったからだよね。



ドアが開き、見覚えのあるサングラスをかけた
背の高い男が近づいてきた。

声を聞かなくても
サングラスを取らなくても、
雰囲気と香りで分かる愛しい人。

嬉しくて仕方が無くて、
人の目なんか気にしずに抱きついた。


「どんだけ会いたかったんだよ。」

苦笑いの彩斗も、
私を抱きしめ返してくれた。


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