【短編集】時空郵便
そうして私がベンチから立ち上がった時だった。
「お姉ちゃん」
車椅子に乗った小さな女の子が恥ずかしそうに私を見ていた。
私はしゃがんで話し掛ける。
「なぁに、お嬢ちゃん?」
私の笑顔で安心したのだろうか、その子の顔がパッと明るくなる。
それは真昼の満月の様にか弱くて儚い、白だった。
「あのね、ネネいつもお姉ちゃんを見てるの。毎日毎日お絵かきしてるお姉ちゃんを」
ネネ。と言う名前の子。
何だか痩せ細ってしまっていた。
「ネネちゃんは絵が好き?」
「分からない。でも……お絵描きをしている時のお姉ちゃんがネネは大好きなの」
にこっと笑うネネ。
何だか恥ずかしくなって私は鼻をかいた。
「あれ?お姉ちゃんカメラもあるのに何で絵を描くの?」
画材を抱える腕とは反対側。
左手にあったカメラを見て不思議そうな、でも少しだけワクワクしている様な顔をしている。
「そうだ、また明日もくる?明日はお姉ちゃんが特別にネネちゃんを撮ってあげる」
そう言って笑うと、ネネは今日一番の笑顔を見せてくれた。
「ほんとう?じゃあ明日もくるね。約束だよお姉ちゃん」
手を振って私達は別れた。
明くる日の再会を約束して……