【短編集】時空郵便
次の日も私は同じ公園の同じベンチで、いつもと同じように絵筆を奔らせる。

そしてまた同じ場所から、永遠に変わり続ける景色を写生していく。



『ピーポーピーポー……』

しばらくすると救急車が公園の狭い通りを横切っていった。

私は気にすることもなく絵筆を奔らせる。

心なしか昨日よりも明るい配色。

ネネと会えるのを私は楽しみにしていた。


そして夕刻を告げる鐘がなる。

「ネネ……今日は来ないのかな?せっかくカメラもあるのにな」

辺りは段々と暗くなってきていた。

こんな時間にあんな小さな女の子が公園に来るはずもない。

私は帰ろうと画材を整理し始める。

すると――

「あなた、ちょっと待って」

見知らぬ女性が話し掛けてきた。

「どうしました?」

女性は凄く慌てていて、顔が蒼白になっている。

あれ?この人誰かに似ているような――

「あなたもしかしてカメラを持ったお絵かき屋さん?」

正確には絵筆を持ったカメラマンなのだが、どう考えてもそれは私のことだろう。

「はい、まぁそうですけど――?」

「ネネが……」

「えっ?」

ネネ?ネネがどうしたの?

あっ、そうかこの人。

ネネにそっくりなんだ。

「ネネが昼過ぎに倒れて、今さっき息を引き取りました」


えっ―――――?







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