【短編集】時空郵便
私とネネの約束が果たされることは無くなった。

そう永遠に叶わぬものとなってしまったのだ。


ネネはよく私の話をしていたらしい。

いつも同じ公園で同じベンチに座り、同じ景色を描いているお姉ちゃん。

カメラを持っているのに絵を描いているお姉ちゃん。

今までどの子にも写真を撮ったことがなかったお姉ちゃん。

それなのに自分を撮ってくれると言った優しいお姉ちゃん。




あの日以来、私はカメラを握ることはなかった。

絵は描き続けていた。

自分の部屋の窓から寂しい住宅の絵を。

私の感情が消えた。

悲しみは黒。

虚しさは白。

口惜しさは白。

後悔は黒。

色彩も感情をも持たない無機質な絵が、私の机に積み重ねられていく。




すると――

『カタン』

郵便受けから何かが落ちてきた。

私がそれを無意識に拾い上げると――

「どーもー。毎度お騒がせ、安心便利をモットーに過去も未来もヨヨイのヨイ『時空郵便』の者でーす」

その男はどこからともなく現われたのだった。
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