【短編集】時空郵便
「あなたはだぁれ?」
私はその時きっとネネの様に無垢な目をしていたに違いない。
男は悲しそうに被っていた帽子を取る。
「"未来のあなた"から"過去のあなた"宛てにその絵手紙を預かってきました。お受け取り頂けて何よりです」
私はその絵手紙を見ることができないでいた。
どうしようもなく恐かったのだ。
見知らぬ少女一人の死で私は感情を失い。
果たせなかった約束に縛られカメラを棄てた。
そんな私の未来を見るのが怖くてたまらなかった。
「"時空手紙"も普通の手紙と一緒っス。受け取った後は見ようと見るまいと受取人の自由っスから」
空はちょうど真ん丸の真昼月が南に浮かんでいた。
「それでは失礼いたしますね」
そう言うと男は音もなく消え去った。
私は勇気を振り絞りその絵手紙を見た。
そこに描かれていたのは儚げで何処か愛しい真ん丸の真昼月。
それは初めて会った日のネネの笑顔の様にか弱くて儚い、白だった。
「そうだ……私は」
私はすぐに画材を持って部屋を飛び出した。