【短編集】時空郵便
「あ、麻衣ちゃん……おはよう。」


少し控えめに挨拶をしてきてくれたのは清水麻衣。

背が小さくて身体が弱い。

少しでも体力を付けようとテニス部に入ったらしい。

初めて見た時、その儚さにもにた印象で僕は一目で好きになっていた。


「優勝したんだね、凄いね。いつもインターハイで優勝するんだ、って言って頑張ってたもんね。おめでとう。」

「あ……うん。」




唐突だった。

優勝をした実感は、まるで舞い上がったシャボン玉が風に打たれるでもなく、何の前触れもなく消えるかのように、突然に訪れた。

「じゃ、また部活でね。」

麻衣ちゃんはそう言うと足早に自分のクラスへと走っていった。



そうか。

何か足りなかったのは――


彼女の

好きな人からの「おめでとう」だったんだ。


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