【短編集】時空郵便
放課後になっても皆から声をかけてもらった。
部活が始まると新入生の多くがテニス部を、おそらく僕を見学にぞろぞろとコートに現れた。
なんかやりにくいんですけど――。汗
僕達の練習は、一つのメニューをこなす毎に90秒の休憩が与えられる。
水を飲んだり、汗を拭いたりそれだけに与えられた時間。
これは試合のゲームとゲームとの間のインターバルを身体に刻み込む為のもので。
このインターバルを上手く使えるかどうか、それもスポーツにおける大切なスキルの一つだと教わった。
そんな時に……
「なぁ、ハルト。そろそろ良いんじゃね?」
急にチームメイトの1人、ダブルスではよく組むアヤトがそう言ってきた。
いや、アヤト。述語だけじゃわかんねから……
「何が?」
「何ってお前……ほら。」
アヤトは「ほら」と2つ隣の女子テニス部の方を指差した。
「ほら、麻衣!!諦めるなー。」
そこでは女子がノルマ打ちというメニューをしていた。
野球で言う千本ノックの様なもので、個人個人の体力に合わされたノルマを打ち続けなければならない練習。
「インターハイも優勝したしさ。もう自信持って告白できるだろ?」
「え、えぇぇっ!?こっ、こっ、ここここ、告白ぅ!?誰が!?誰に!?何故!?」
恋愛というものに奥手……というか全く免疫のない僕は「告白」という二文字を聞いただけで我を忘れた。
「なにゆえ?いや、オマエが清水に、好きだから。」
うん、そうだよね。
素晴らしく簡潔な回答だよね。
花マル、二重マル、一等賞だよね☆
「つかな、周りからみたら清水ってオマエに惚れてるぜ多分。もう、待ちくたびれてんじゃねーの?本当はさ。」
そう言われて僕は麻衣ちゃんをちらりと見る。
ノルマ打ちを終えて、空色のタオルを片手にベンチに座っていた。
いつもより儚げな顔に表情。
そして、そんな中に煌めく強い眼差し。
僕は麻衣ちゃんのそんな姿が好きだった。