【短編集】時空郵便
タダキチの脱いだ服を洗濯機に入れ、翌朝に回るようにタイマーをかけた嫁がキッチンに向かう。
「はははは。」
「あはははは。」
キッチンから2人の笑い声が聞こえる。
いつもなら眠っているはずの老人の声もしたので、嫁は嫌な予感を感じた。
キッチンに入ると2人がご飯を食べていた。
「……お義父さん、お腹すいちゃったんですか?」
「何を言う、そりゃ飯も食わずタダキチを待っていたんだ腹も空く。」
老人は真剣な口調で、これが冗談で言っているわけではないと気付く。
嫁は全身から血の気が引いていくのを感じ、わずかに震える手で口元を覆いながらタダキチを見る。
「……あなた。」
「……?どうしたんだい?」
その嫁の様子に、ただ事ではないことをタダキチも悟る。
とりあえず食事をそのまま続け、老人が床につくのを確認してから2人は話し合った。
ここ最近、癇癪(かんしゃく)を頻繁に起こすこと。
夕方のトイレのこと。
そしてこの食事のこと。を。
そして2人は、明日、近くの病院に連れていくことに決めた。
素人の考え過ぎ。それで済み、後に笑い話にできることを願いながら。