【短編集】時空郵便
すると曲がり角に急に影が現れた。
「どーもー。毎度お騒がせ、安心便利をモットーに過去も未来もヨヨイのヨイ『時空郵便』の者でーす」
突然に現れた男に私は立ち止まった。
恐怖は少しもない、不思議な感覚。
「西田奈緒美さん。あなた"過去"か"未来"の自分に手紙を出したいとは思いませんか?」
ぬるい風で草が揺れる。
「過去か未来の自分に手紙を……?」
男はゆっくりと頷き、肩から提げたカバンから一枚の便箋を取り出した。
私はその真っ白な便箋を受け取る。
何故か分からないけれど手が震えていた。
「もっともっと伝えたいことがあった。もっともっと言わなくちゃいけないことがあった」
唇が震える。
私は涙をふくのも忘れて一心不乱にその便箋に書いていく。
そして書き終えたそれを渡すと男は消えた。