【短編集】時空郵便
母には見えない?

僕にしか見えない。

その時、僕は唐突にこの男に信憑性を見いだすことが出来た。

「…どうやら、信じて頂けたようっスねぇ。」

僕はゆっくりと頷いた。

「さて、依頼人から。つまり"未来のあなた"から手紙を預かって来ました。どうぞ。」

男がバッグから取り出したのは、奇妙なほど真っ白な封筒だった。

僕は封筒を受け取ると、ゆっくりとその封を取った。

『過去の俺へ。信じられないかもしれないが、この手紙は時空を越えることが出来るものだ。
今俺はわけあって刑務所にいる。いいか?母の、教師の、周りの言いなりになって生きるな。
そして、何があっても法に背くものに手を出すんじゃないぞ。』

手紙はあり得ない内容で、でも何処か芯に迫るものだった。

「あの…未来の僕は何故刑務所にいるんですか?」

僕の質問に男は言葉を濁すようにして答えた。

「あー、アタシは手紙を届けること以外はできません。ほら…あー、アレっス。プライバシーってやつっスね、うん。」

「プライバシーって…依頼人は僕なんでしょ!?」
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