【短編集】時空郵便
九通目:ドラマチック
「あなたは過去や未来に手紙を出したいとは思いませんか?」
スーツ姿にオールバック。
紳士的な佇まいに似合わない、怪しげな雰囲気の男が、喪に伏す女性にそう言った。
「未来や過去に…………?」
涙でくしゃくしゃの顔で、何かにすがるように手を出した。
「ではこの手紙にあなたの想いを綴ってください」
男の差し出した手紙に想いを綴る女性。
涙を必死で堪えながら想い人への気持ちを綴った。
「確かに承りました」
手紙を受け取った男が丁寧に頭を下げる。
そのまま数秒が経った時だった。
「はーい、カットぉ!!」
メガホンを片手に、山崎はそう言った。
スタジオのセットに居た女性とオールバックの男性がほっとした顔を見せる。
「いやぁ、二人とも良かったよ。映像の確認するから楽にして待ってて」
「はい」
「ありがとうございます。野崎監督」
二人はセット横のテーブルにつき、安堵の表情を浮かべながら用意されたケータリングに手を出した。