Sin



きっと、あの人は分かってくれてない。


あたしがどれだけSinを好きなのか。


どれだけSinに救われたのか。




それがとにかく悔しくて。

あたしはひたすら泣いた。



やっと泣きやんだ頃、普段は冷静な月がかなり焦ってた。

「どうしたのよ?雫、誰かに襲われでもしたの?何か言われた?」

一気にたくさんのことを聞かれて逆にあたしの方が焦ってしまったくらいだった。


簡単に、さっきの出来事を説明すると、急に月が立ち上がって奥の方へと歩いてった。


「えっ、月!そこはスタッフルームだって…」

あたしはさっきの男の子に言われたことを叫んだ。
けど、月は気にする様子もなくそのまま進んでいった。

聞こえてなかったのかと慌てて追いかけると中から怒鳴り声がした。

「あんたでしょ?雫を泣かしてくれたのは。覚悟、できてんでしょうね?」

「…お客様、言ってることがよく分かりませんが」

月の怒ってる声だった。
怒鳴り声とは、言えないかも知れない。
それほどまでにまた冷静な月に戻っていた。

月の方を見ると、それは確かに真さんだった。


あ、れ?

月、何で知ってるの?



「とぼけるのは止めてちょうだい。貴方はうちの社員でしょう?神無月涼太さん?」



いきなり月はどっかの会社の重役みたいな話し方になった。
月の場合不自然じゃないから不思議だ。


「…貴方の名前は?」



神無月涼太さん、と呼ばれた真さんが月に聞く。


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