Sin
「月よ。…西条月って言ったらあなたも分かる?」
腕を組んで堂々とした姿のまま月は答えた。
か、かっこいい…
なんて思わずあたしも思っちゃうほど。
でも、全然話が読めません…
月の返事を聞いた真さんが微かに眉をひそめた。
どうやら心当たりがあったらしい。
「西条社長の娘さんでしたか。失礼しました」
頭を少しだけ下げて、真さんは謝ったけど、謝ったって言うより形式上頭を下げたみたいな感じになっていた。
「あたしに言わないで、雫に言ってくれない?傷ついたのは、雫」
そう言って月は真さんを睨みつける。
「あ、あのっ月!」
あたしはとてもじゃないけど、居た堪れなくなって月に声をかけた。
「もういいよっ!ありがとね、月」
「でも、」
「いいのっあたしが勝手に言ってただけだし。もしかして、違ってたから迷惑してたのかも知れないし…」
つぅーと、冷たいものが頬を伝った。
また、涙。
泣くつもりなんてなかったのに。
迷惑だったかな、って思ったら悲しくなったなんて自己中な考え。
はぁ…と溜め息をつきながら、月が近づいてくるのが分かった。
きっと、月も呆れちゃったんだ。
馬鹿みたいなあたしに。
そう思ってきゅっと口を結んで、涙を我慢しようとした。
ふと、頭に手のひら。
顔を上げるとあたしの頭はかなりぐしゃぐしゃにされていて、前が暗かった。
「泣かないでよ、雫。あんたがSinのことどれだけ想ってるかなんて暗記しちゃうくらい聞いたから。分かってるよ。それに、雫の言ってることはあながち間違っちゃいないの」
「おいっ!」
あたしは固まった。
それ、それって…もしかして?