Sin
出てくるまで待っていて1回でも話しかけたいそう思ったんだけど電話が鳴った。
タイムリミットだ…
「…はい」
不機嫌丸出しなあたしを気にも留めず電話の相手は話しかけてきた。
『あ、雫ー?もう遅いから俺腹減ったんだけどぉー』
「…自分で作ればいいじゃん」
『それができないから頼んでんだろー早く帰ってこいよ』
「あーもう!!分かったよ。帰ればいいんでしょ!そん代わり今日の夕飯はカップラーメンだから!!」
電話の向こうでは‘カップラーメン’と聞いて
『俺なんかしたか?』
と焦り気味の奴の声が聞こえたけどそれはあえて聞かなかったことにする。
今の電話の相手はお兄ちゃん。
あたしの唯一の血のつながった人。
あたし達の両親はあたしは中2の時に眠りについた。
交通事故…だった。
あまりに急なことであたしにはその事実が素直に受け止められなかった。
不登校になり始めていたあたしを救ったのはお兄ちゃんとSinの曲だった。
部屋にこもり気味になったあたしを心配して21だったお兄ちゃんが持って来てくれたCDがSinの最初のシングル‘真実’だった。
何もする気力はなかったけどこれ以上お母さん達の事を思い出したくなかったのかもしれない。あたしはプレイヤーにCDを入れた。
流れてきた曲はゆったり系のバラードだった。
その曲は別れた恋人の事を歌っていた。