SUMMER DAYS -24's Outsider Love Songs-
「今日は楽しかっただろ?」
「まあね」ギンの問いかけにコーラのプルタブを開けながら答えた。
「じゃあ今日の本題に入ろうか」
僕はギンの突然の一言とコーラの炭酸に少しむせた。
「言っただろ、オレが見極めてやるって」
僕は、その事を全く忘れていた。

「初々しくて、特にお前は始めて彼女が出来た高校生見たいで、それでもそれなりに楽しそうだった。お前も彼女も」
「だったら良いじゃないか」
「だけど、何か決定的な違和感を感じた。彼女にね」
ギンはコーヒーを一口飲んで続けた。
「彼女は闇を抱えている」
「適当な事言うな」
僕は少し口調が荒くなるのがわかった。
「適当かもしれない、だけどオレはこの春までホストだったんだ、No2まで行ったね。ホストって職業は好むと好まざると女の闇を見る事になる、そして時にはそれを食い物にする。だから女の闇の部分には敏感になるんだ。わかるかいユウスケ?」

ギンは真剣に語り出すと僕の事をユウスケと呼び捨てにする癖がある。
「だったらその闇は何なんだ?」
「それはわからない、だけどユウスケにとっては辛いかもしれない、タフにならないとね」
僕は静かにギンの言葉を聞いていた。
「悲しみは伝染する。だからそれを乗り越える為に強くならなければならない」
ギンは僕の目の前に掌をかざして続けた。
「闇を飲み干して闇に染まるか、闇に飲み込まれて闇に落ちるかのどちらか。ユウスケどっちがいい?」
「予言か?」
僕はギンの手を払って言った。
「出任せさ」
ギンは屈託の無い笑顔だった。
「今度作詞でもしてみろよ」
「そのうちね」
「もう帰るぞ」
僕は飲み終えたコーラをゴミ箱に捨てるとギンのバンに向かった。
「闇を覗く者は、等しく闇に覗かれる事を畏れなくてはならない」
「何?」
「さあ行くぞ、ユウちゃん」
僕の背中に向けられたギンの言葉がニーチェの引用である事を知ったのはずっと後の事だった。
僕は無言で助手席に座っていた。
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