♂性別転換♀
空気が張り詰め、ピリピリとしたムードが俺と大翔を包み込む。
「大人になんか、なれないよ……」
ほとんど吐息に近い呟きを、地獄耳の俺は聞き落とさなかった。
声だけでなく、存在そのものが消え入りそうなほど、覇気がなくなり小さく見えた。
なんなんだよ。マジでなんなんだよ。
いつもならキツイことを言ってもケロッとしている大翔が、俺の一言でここまで落ち込むなんて。
あの一言に、地雷なんて存在していたのだろうか?
いや、あったんだ。
大翔が落ち込むほどの何かが―――
拳を強く握りしめ、今にも泣き出しそうな大翔にかける言葉が見つからない。
時が流れてくれれば、なにかの拍子に突破口が見いだせられるが、無情にも魔法によって時が進むことはない。
俺達の時も止まっているかのような錯覚に陥っていると、グッとカカトで指先を踏み付けられた。