♂性別転換♀
虎ちゃんの前へと足を運ぶ。
ワックスでセットされた髪は掻いたせいで乱れているが、構わず頭を掻き続けている虎ちゃん。
「実は……」
手の動きが止まり、視線がぶつかる。
澄んだ漆黒の瞳に吸い込まれそうになったが、両手をきつく締め堪えた。
嫌な予感がする。虫の知らせを肌で感じた。
「実は……」
一呼吸おき、虎ちゃんが言う。
「嘘なんだよね、全部」
春の小風のような、柔らかい台詞だった。
「……へぃ?」
「俺が光のこと好きだって言うの、全くのデタラメなんだよね。ハハハ」