♂性別転換♀
今朝は敢えて突っ込まなかったが、あのマンションには大翔の両親の姿がなかった。
料理も食器の後片付けも大翔がやっていたし、両親の存在を漂わせる物も見当たらない。
他界か出張。もしかしたら複雑な家庭環境があるのだろうが、大翔が一人で暮らしているのは間違いない。
寂しさをまぎわらすために俺をお姉ちゃんにした。
最初はそう思ったが、やっぱり俺をお姉ちゃんにするには効率が悪い。
では何のために俺を?
「どうした。さっさと入れ」
「あ、すんません」
馬鹿がいっちょまえに考えたって、答えなんて出るわけないか。
―僕を殺せば、魔法が解けるかもね―
大翔が言った言葉。
心の奥底に引っ掛かって、気を抜くと頭の中でリフレインする。