(タイム)Timeless(レス)
葉月と出会った頃の俺。

結構、いい加減で、
ちゃらんぽらんで、
恋愛とかどーでもい〜って感じで……

とにかく、どうしようもない男だった。

今も、いい男ってわけじゃないけどさ。
今より更に、最低だったと思う。


『葉月ちゃんって、どんなだったっけな〜』

廃棄になったオデンの大根を箸で割りながら、明史が言う。

『普通だよ。 特別に可愛いわけでも綺麗でもない。 普通の子……』

葉月の事で俺に気を使ってか、明史は早めに仕事を終え、近くの児童公園に場所を移してくれた。

『目立つ感じじゃねーわな。 俺、あんま覚えてないし』

そうだよ。
葉月はそんな奴だ。
目立つ事なんてしそうにないタイプ。

どこにでもいる、平凡な女子の中の1人だったんだ。

自慢じゃないけど。
俺の周りには沢山の女の子がいた。

綺麗な先輩。
可愛い後輩。
気の合う同級生。
体の相性がいい街の女。

それだけいる中で、葉月は特別だった。

葉月は、俺の中の一番高い位置に存在し。
そこから落ちる事は無かった。
……死んだ今も。


『正直さぁ…… 葉月が亡くなった事に、ここまでショック受けると思わんかったわ』

さすが、捨てる寸前のオデン。
煮すぎて、箸(ハシ)で掴めねーっつの。

ぐちゃぐちゃになって汁に浮く、大根の残骸(ザンガイ)。

『葉月、綺麗だったな……』

これを見て、葉月の遺体を思い出す。

交通事故だと聞いていたのに、葉月の遺体は驚く程、綺麗なままだった。
逆に、何故あれで死ねるのか不思議だった。

血もほとんど出ていない。
傷もない。
まるで眠ったような……

それでも、色は青白く血の通っていない、硬そうな「死体」だった。

『はは、馬鹿みてぇ』

大根ひとつで、ここまで妄想できる俺。

マジやばい……

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