(タイム)Timeless(レス)
変えられないから、変えなかった。
でも、変えられるなら……?
『遅いよ、瑛太〜』
夕方になり家に帰った俺を待っていたもの。
それは、プゥと頬を膨らませドアに寄り掛かるレナだった。
『あのねー? すぐには無理かも知れないけど、瑛太に元気になってほしくて』
俺が一瞬、顔をしかめたからか、レナは口元を隠してクスクスと笑った。
『とりあえず今日の用はそれだけ! じゃあ……ね?』
この間とは打って変わって、あっさりなレナ。
それ、なんか調子狂う。
今まで、セックス以外に会った事がなかったから……
『レナ』
と、俺は咄嗟(トッサ)にレナを引き止めてしまった。
『俺さ。 どんな事があっても、どんな人が現れても、葉月が一番だよ』
何故、こんな事を言ってしまったのか、自分でもよく解らなかった。
レナに期待を持たせないため?
レナに惹かれないようブレーキをかけるため?
……解らない。
『2番でいいよ。 瑛太はいつだって、そうだったでしょ?』
葉月が死んだ事を認めたくない自分が、葉月を頂点に置き……
あたかも、葉月が生きているかのように錯覚させる。
『昔みたいに体だけでもいいし…… 私、少しでも瑛太の気を紛らしたいよ』
頭では解ってるんだ。
前に進まなきゃいけないって事。
でも、もし。
もし、過去が変えられるなら。
葉月の事故が無かった事になるのなら。
……まだ、諦めるのは早いんじゃないか?