(タイム)Timeless(レス)
しっかりと地に足が着いた感覚。
夢の中にいるようなフワフワとした違和感はない。



『いってきます』

母親の用意したピザトーストをたいらげ、猫舌な俺に合わせた温めのココアを飲み干し。
俺は玄関を出た。

ピザトースト。
温いココア。

それは子供の頃から二十歳になった今でも続けている事。
こんな事まで反映される夢に、正直、気色が悪かった。


歩き慣れた道を歩き、学校へ向かうために駅を目指す。

途中、大きな空き地で足を止めた。

「大型ショッピングセンター 建設予定地」

まだ何もない真っさらな土地に立つ、大きな看板。

俺は、その空き地の行く末を知っているだけに、冷や汗が出た。

ここにショッピングセンターが建つ事はない。
ここの建設を受け持っていた会社は潰れてしまったのだから……

そして、組み立て途中だった鉄骨に首を括(ククリ)り、社長だか部長だかが失くなった。

今だに組み立てられた鉄骨は、そのままだし。
工事が進む事はない。

それは、この街で一番の噂だった。

『……最悪…』

自ら命を絶つ「自殺」というものに、言い表せられない程の怒りと嫌悪感。

葉月は事故で、泣く泣く命を落とした。
きっとまだ、生きたかったはずだ。

生きて、俺に言いたい事があったはずだ。

「大事な事は直接言いたいから……また明日ね」

葉月の最後の言葉がそれだったのだから……
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