お兄ちゃんは悪魔サマ
 


こちらを向いたお兄ちゃんは、少し悩んだ様子で口を開いた。




「生きてる頃はそうだった。いやそのつもりだった……かな」

「昼間に会った女の人……?」



お兄ちゃんは少し驚いた表情を浮かべた。

私は、やっぱりそうだったんだという複雑な思いになる……




「ま、と言っても死んだ時はアイツとは別れてたんだけどな」

「どうして別れちゃったの?」

「よくある些細な喧嘩さ。あの頃の俺はホント馬鹿だったからな……死んでから気づいた事、たくさんあるんだ」



そう言って、お兄ちゃんはジッと私を見つめて来た。

その視線が妙に熱く感じるのは気のせい……?




「私の……」

「え……?」

「私の事は……?お兄ちゃんにとっての私はどんな存在?」



私も真っ直ぐお兄ちゃんを見つめ返した。真剣なその表情に、お兄ちゃんも考え込んでいる様子だった。




「建前とかこれから先の事とかそんな事はどうでもいいの。今、この瞬間にお兄ちゃんが私の事をどう思ってるかが知りたい」








ねぇお兄ちゃん……

もしお兄ちゃんが私を好きって言ってくれたら、私はもう迷わない事に決めた。


悩んだって好きなものは好き。この先どうなるかなんて誰にも解らない。

だから自分の気持に正直になる。







それが、決して許されないものだとしても……



 
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