お兄ちゃんは悪魔サマ
 


しばらくの沈黙の後、お兄ちゃんはようやくポツリと話し始めた。




「言葉にするのは簡単だ。でも、その言葉によって何もかもが変わってしまう事もある……」

「……それでもお兄ちゃんの気持ちが知りたい。私は私なりにちゃんと考えてる。考えなしに、ただ聞きたいなんて言ってる訳じゃないよ」

「最初と今では想いの大きさが変わってる。口にしたら、本当にもう戻れなくなる……」



そう言うお兄ちゃんの表情はとても苦しそうで、お兄ちゃんはお兄ちゃんなりに悩んで、葛藤していたであろう事が垣間見えた気がした……






「今日ね、尚哉くんに言われたの。今は今しかない。だから後悔して欲しくないって……。私も後悔したくない。一度お兄ちゃんを失ったあの時みたいに……」

「唯……」

「だから私は自分の気持ちに素直になる事に決めた。お兄ちゃんも自分の心に嘘はつかないで……?」




その言葉を聞いたお兄ちゃんは一歩、私に歩み寄る。




「戻れなくても知らないぞ…?」

「うん」

「本当に知らないぞ?」

「解ってる」

「…………」



そのまま動かないお兄ちゃんに痺れをきらして、私は自分から抱きついた。








「お兄ちゃん、大好き……」



 
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