お兄ちゃんは悪魔サマ
きっとお兄ちゃんの答えなんて、聞かなくても解ってたんだと思う。
だって兄妹だもん。
大切な絆であり、私達を縛る鎖でもある……
お兄ちゃんは無言のまま、私を強く強く抱き締める。
「お兄ちゃん、もう外でエネルギー補給しないでね……?」
「本当にいいんだな?」
「もぉっ!何回もしつこい!!」
「ごめん……」
お兄ちゃんの腕の力は弱まる事なく、私を締め付けていた。
「お兄ちゃっ、ちょっと苦しい」
「唯……1つだけいいか?」
「……何?」
苦しかったけど、真剣なお兄ちゃんの声色に耳を傾けた。
「悪魔ってのは人間以上に明日が解らない。常に危険は隣り合わせだ。その覚悟だけはしておいて欲しい」
「それは、お兄ちゃんが居なくなるって事……?」
「もしもの話だよ」
「もしもだとしてもそんな話しないでっ!!お兄ちゃんを失う悲しみは一度で充分だよ……」
「そうだな……ごめん」
「さっきからごめんばっかり。私が聞きたいのはそんな言葉じゃない」
結局、お兄ちゃんの口からちゃんと気持ちを聞けてない。
少しお兄ちゃんを押し返して、顔を上げて見つめる。
お兄ちゃんはフッと微笑んで、私に言葉をくれた。
「唯、愛してるよ……」
こんな私達でも、幸せになる事は許されますか……?
ただ側に居られるだけでいい……だから、もうお兄ちゃんを私から奪わないで……