お兄ちゃんは悪魔サマ
その人は赤に近い少し長めの髪を後ろで一纏めにしている。
端正な顔立ちにスッキリとした眼鏡がかかっていて、それがまた大人の男性という雰囲気を醸し出していた。
身長は180は軽くあろうかという位。
うちの学校にはいないタイプの人で、女の子たちがほっとかなさそう……
「俺は臨時で保健医を勤めることになった八城(ヤシロ)だ」
「あの……木村先生は?」
「ああ、彼女はちょっとした事故に遭われてね。しばらくお休みされる事になったんだ」
「事故って、大丈夫なんですか?」
「命に別状はない。ただ当たり所が悪かったらしくてね、数か月の安静が必要らしい。それで俺が臨時で雇われたってわけ」
説明を受けながらまじまじと八城先生を見る。
話の途中にもかかわらず、椅子に座って煙草を吸い始めたこの男を……
ここ保健室なんですけど…
なんて事は特に言わずに黙視してたけど、仕草なんかが何ともこの場所に似つかわしくない。
「あの……本当に先生なの?」
「俺じゃご不満でも?」
「いえっ……べ、別に……」
にっこりと笑うその笑顔に禍々しさを感じるのは……気のせい?
思わず引き攣った笑みを浮かべる。
ちょうどその時、タイミング良く?チャイムが鳴った。
時計を確認すると、6限目の終わりを知らせるものだったと解る。
「もう痛くはないか?」
「あ、はい」
「じゃあ今日は大人しく帰れよ」
私は、一応お礼を行って保健室を後にした。
何か先生らしくない変な先生だったなぁ……
八城先生が歩き出した私の後姿を見つめていた事なんて、知る由もなかった……