お兄ちゃんは悪魔サマ
「唯」
翌日の放課後、帰り支度をしている私のところへ先輩が来た。
「先輩……」
「今日、うちに来るんだろ?一緒に帰ろう」
「あ、はい……」
先輩の家に向かいながら他愛もない事を話したりしたけど、昨日の今日だし私はうまく先輩と話す事が出来なかった……
「昨日はごめんな……」
会話の切れ間に突然だった。
私は先輩の顔を見る事も、返事を返す事も出来ずに黙ったまま……
「……陵さんと、うまくいったんだろ?」
「……!?」
ちゃんと話さなきゃとは思っていたものの、完全な不意打ち……
私は、地面から視線を動かせなかった。
「唯の様子を見てればすぐ解るさ。唯はすぐ表情に出るから、隠し事は出来ないタイプだな」
そう話す先輩はどこか淋しそうで、少し心が痛んだ……
「あの……やっぱり軽蔑しますよね?お兄ちゃんとなんて……」
「……まぁびっくりはしたけど。でも昨日の陵さん見てると俺まで苦しくなってさ」
「昨日って、先輩と喧嘩みたいになった時?」
「違う。常に……かな」
「常に?」
先輩は少し遠くを見ながら話しを続ける。
「陵さんの視線は常に唯を追ってた。唯が笑えば嬉しそうな顔してさ……。でも時々、凄く苦しそうな表情を浮かべてたんだ」
お兄ちゃんがそんな風に私を見ていたなんて、全然気がつかなかった……