お兄ちゃんは悪魔サマ
「そう言えば、先輩はずっとお兄ちゃんを見てたんですか……?」
ふと沸き上がった質問をぶつけてみる。
「いやっ、ずっとって訳じゃない。ただ、唯が自分を犠牲にしてまで守ろうとしたのが、どんな人なのか気になってつい……」
焦った先輩がちょっと可愛くって、ちょっぴり笑ってしまった。
それを見た先輩は少し顔を赤らめてた。
すぐに私に見えないようにそっぽ向いてたけど、見えちゃった。
「先輩……、先輩は悪魔との幸せな未来はないって以前私に言いましたよね?」
「ああ……」
「正直なところ、私も不安だらけです。何があるか解らないし、お兄ちゃんとは結婚して家庭を持つ事なんて許されない……。それでも今、後悔しない道を選んだつもりです」
先輩は視線を私に戻すと、真っ直ぐこちらを見た。
「唯は強いな」
「え……?」
「凄く強いよ。何かカッコいい。それだけ唯に想われる陵さんが、ちょっと羨ましい……」
「先輩……」
「俺も気持ちじゃ負けてないつもりだったけど、完敗かな」
手を上にあげて伸びをする先輩。
その顔は先ほどとは打って変わり、清々しさを感じる。
やっぱり先輩はイイ男で、短い間だったけど付き合えて良かったと思えるよ。
先輩には幸せになって欲しいな……