お兄ちゃんは悪魔サマ
「尚哉、何があった!?大丈夫か?」
先輩は、尚哉くんを抱きかかえながらリビングに戻る。
ソファーに尚哉くんを寝かせると、リビングにある棚を開けて何かを探している。
私は尚哉くんに近寄り怪我の程度をみる。
体の表面には、小さな切り傷が至る所についていた。所々には殴られたような痣もある……
一体誰に……?
「んん……」
「尚哉くん!?」
「あ、唯か……」
「うん、大丈夫なの?何があったの?」
「尚哉、気がついたか」
その声に振り向くと、先輩は片手に救急箱を持っていた。
その中から消毒液とガーゼを取り出し、尚哉くんの手当を始めた。
「ってぇ……」
「少し我慢しろ。それにしても何があったんだ?」
手当を続けながら、先輩が一番気になっていることを尚哉くんにぶつける。
「新しい悪魔が居る」
「「えっ!?」」
先輩ときれいに声が重なる。
先輩と顔を見合せて、尚哉くんの方を向き直す。
「この怪我はその悪魔にやられたのか?」
「うん、まぁな」
「もしかして今日話したかったのって、その悪魔の事……?」
「あったり~唯って意外と鋭いな。って、痛いって!兄貴、もうちょっと手加減してくれよ」
「男のくせに情けないことを言うな」
先輩の手付きはかなり大雑把で、見るからに痛そうだった……
「あー……先輩、手当変わりましょうか?」
「いや、もう終わるから」
尚哉くんは縋るような目で私を見ていたけど、どうする事も出来ない私……
少ししてバンドエイドだらけになった尚哉くん。
「俺、かっちょ悪ぃ……」
自分の体を眺めながら、ため息をつく尚哉くん。
でも、新しい悪魔の事が気になって仕方なかった私は、そんな彼を気遣う余裕もなく話しを切り出した。
「あの、悪魔が居るって……」
すると、一瞬で尚哉くんの顔つきが変わった。