お兄ちゃんは悪魔サマ
「冗談じゃないっ!!!仮にも陵さんはすでに死んでしまった人間だ。唯はまだ生きてるじゃないか!?」
「確かにお兄ちゃんはもう人間じゃない……。でもね、そこに存在しているの。話したり触れ合う事も出来る……」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!2人だけで話進められても困る」
尚哉くんは1人、私と先輩の会話を聞いて戸惑っていた。
お兄ちゃんを止める事の意味を、まだ理解してない様子だった。
先輩がため息をついて、はっきりと言葉にする。
「いいか尚哉。陵さんを止めるという事は……唯は死ぬという事だ」
「……つまり、俺たちに唯が死ぬ手助けをして欲しいって事か?」
「ちょっと違うけど……同じようなものだろう。なぁ唯?」
確かに結論から言うとそうなる。でも、なんて言ったらいいか解らずにいた……
「唯、俺も冗談じゃない。兄貴の言う通りだよ。唯にとって陵はかけがえのない存在で、唯は自分を犠牲にしても守りたいって思ってんだろ?」
「……うん」
「それって陵は幸せか?唯を助ける為に悪魔になったのに、唯を助ける事も出来ずに、自分は悪魔として永い時間を過ごさなきゃならないなんて……」
解ってる……
そんな事、誰よりも一番私が……
「解ってるよ!!それでも……、それでもお兄ちゃんが消滅するなんて耐えられないの!!ただのエゴかもしれない。自分勝手な自己満足かもしれない。でも……でも!」
感情が昂った私の目からは、いつの間にか大粒の涙が零れていた。