お兄ちゃんは悪魔サマ
その夜は寝ようとすればする程、唯の事が頭をちらついて離れなかった。
明日…陵さんに会いに行こう。
唯を助けたい気持ちがあるなら、きっとこんな俺でも何か出来るはず……
同じ気持ちでいる以上、陵さんも俺を邪険にはしないだろう。
彼は唯の家に居るのか……?
何処に行けばいいのかも解らなくて、それでも動かずにはいられない。
こうしてる間にも、唯の死は迫っている……
結局ほとんど眠れぬ夜を過ごし、朝になりダイニングに行くと尚哉は既に朝食を口にしていた。
「寝れなかったのか……」
尚哉もまた疲れた顔をしていた。
俺と同じ……唯の事を考えていたんだろう。
「兄貴もだろ?」
「まぁ……」
ぎこちない会話を交わす俺達は、その後は押し黙ったまま別々に家を出た。
俺はそのまま学校ではなく、唯の家に向かった。
時間は既に授業開始直前。唯と鉢合わせる事がないようにする為だ。
「さて、どうするかな……」
もちろん中に陵さんがいたとしても、玄関のチャイムを押して出てくる訳がない。
俺は彼の部屋があるであろう二階を見ていた。
なんの変化もないまま、時間だけが過ぎていく……