お兄ちゃんは悪魔サマ
「あれ……?」
ふと感じた気配……
一応これでもハンターの端くれ。それが悪魔の気配である事くらいは解った。
家の正面から少し横にずれて覗きこむ。
……これじゃただの怪しい人だよな。
でも、確かに今の気配は間違いない。ここに陵さんが居る……
少しすると、2階の窓から1匹の黒猫が出てきた。
あれは……!!
「陵さんっ……!!」
俺は近所の目だとかそんな事を考える暇もなく、大声で名前を呼んでしまった。
黒猫はビクッと反応し、こちらの様子を窺(ウカガ)っている。
俺は静かにお辞儀をした。
しばらくすると、その黒猫はこちらに近寄って来た。
「何か用か……」
愛らしい猫の姿に似つかわしくない低い声だった。
俺は率直に唯の事だと告げた。
「何故知ってる……?」
ますます声色が低くなった。
外で話すことでのリスクも考え、どこかゆっくり話しができる所に行きたいという提案をする。
黒猫は静かに歩きだした。
まるでついて来いと言うように、こちらを振り返る。
それに従い、俺も歩き出した。