お兄ちゃんは悪魔サマ
 


しばらく少し距離をおきながらついて行くと、陵さんはあるマンションへと入っていった。


陵さんは横からスッと入っていった為、追いかける訳にもいかず正面へと行ってみる。

しかし入口にはオートロックがかかっいて、入っていく事が出来ない……



どうしたものかと考えあぐねていると、中から人型に戻った陵さんが出てきた。




「こっちだ」



俺は黙ったまま彼の後を追う。
ここはどこだろう……?


まぁそんな事はさして大した問題ではないのだが。

エレベーターに乗り込むと、30階のボタンが押される。


俺がこんな風に勝手に陵さんと接触した事を知ったら、唯はきっと怒るんだろうな……




「ここだ。俺の部屋じゃないけど許可は貰ってるからゆっくり話せる」



俺は一番知りたかった事を、率直に尋ねた。




「唯の……唯の死ぬ日はいつなんですか?」

「それを知ってどうする?」

「唯は……」



一瞬、あの時の唯の顔がチラついて、話すのを躊躇ってしまった。

唯がした決断が相当なものだと解るからこそ、それを陵さんにこうも簡単に話してしまっていいものなのか……




「唯が何か言っていたのか?」

「……はい」

「それは、唯は自分が死ぬつもりでいる……とかじゃないか?」

「……っ!?」




どうして解ってしまったんだ?

それとも、すぐに予想できる位の事なのか……?




「アイツの考えそうな事だよ。これでも兄妹で、俺の大切な……」





そのまま陵さんは押し黙ってしまった。彼だって悩んでいないはずがないのだ……






「陵さん、俺は唯を助けたい」




 
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