お兄ちゃんは悪魔サマ
「ここはイグルスさんのマンションですか?」
「ああ」
「俺がここに来たのは突然だったのに、許可を貰ったとか言ってませんでしたか?どうやって連絡を……?」
俺が陵さんと接触してからずっと後を追ってきた。
その間、誰かと会ったりする様子はなかったし、マンションに着いてからもそんなに待たされてない……
「ああ、テレパシーっつうの?予め決めといた周波数みたいなので、連絡出来る」
「へぇ……便利ですね。じゃあ今すぐイグルスさんと連絡取れませんか?」
「今すぐ?」
「はい。時間がないから無駄な時間は使いたくないんです。何となくとしか言い様がないんですが、悪魔の存在する意味が重要な糸口になる気がして……」
陵さんはしばらく黙ったまま……
俺は声をかけるかどうか迷ったが、もう少し様子を見る事にした。
陵さんが途中から目を閉じたからだ。
もしかしたら連絡してくれているのかもしれない。
「……駄目だ」
ゆっくりと瞼を開けた陵さんがそう言った。
駄目だけでは何の事だか解らない。
「一瞬、言葉が伝わってくるのに何かに邪魔されるように途切れる。こんな事初めてだ……」