お兄ちゃんは悪魔サマ
「聞こえる部分から何か解らないんですか……?」
「何か言ってるのは解るんだが、内容はさっぱりだ……」
今までにない事態が起こっていると言う事は、間違いなく誰かが故意に邪魔してるとしか思えない。
「陵さん、俺もう一度八城先生と話そうと思ってたんです。先生の仕業かは解らないけど……今から行ってみます」
「……俺も行く。連れてってやるから急ぐぞ」
そう言ってベランダに向かう陵さん。…………飛んで行く……って事だよな……
「あの……俺、走って行きます」
「は!?余計な時間かかんだろ。連れてってやるって言ってんだから、早くしろよ」
「いや、あの、……高い所はちょっと……」
陵さんはニヤリと笑ったかと思うと、ズカズカ俺に近づき、手を掴んでベランダへ連れて行こうとする。
「ちょっ、陵さん!!」
「時間がないんだろ?唯の為だ。行くぞ」
「ぐっ……」
俺がその言葉に怯んだ隙に、体はフワッと浮き上がり宙に浮いていた。
急ぐと言っていたように学校まではあっという間だったが、俺の体はガチガチに固まっていた……
「そんなんじゃ、唯を任せられねーぞ……?」
そう言って笑った陵さんの顔はどこか物憂げで、何だか俺が切なくなってしまった……