お兄ちゃんは悪魔サマ
「んんぅ〜……」
「……尚哉、今何か言ったか?」
「なんも。気のせいじゃね?」
兄貴は納得いかないのか、やたらと部屋の中を見回していた。
まぁドアは半分しか開けてないから、ベッドは見えない位置にある。
「おい尚哉……何だアレ?」
「は?」
兄貴の視線は床を向いている。
その視線を辿ると、そこにはたどたどしい動きで歩く小さな熊がいた。
兄貴は俺を退けて部屋に入ると、おもむろにそれを拾い上げた。
「きゃああっ……!」
「喋った……?何だコイツ……」
「コイツじゃなくって紗香です。あなたは誰ですか?」
「おい尚哉、コレ何?」
あーあ……見つかっちまった。
まぁ別に困るわけじゃないからいいけど。
「あー……紗香は悪魔だ」
「は…?悪魔?これが?これだけ近くに居て、全く何も感じとれないぞ……」
「なっ……さっきからコイツとかコレとか、レディに向かって失礼ですよ!!」
レディねぇ……
このちっこい熊のぬいぐるみみたいなのを見て、躊躇いもなくレディとか言うヤツがいたら間違いなく引くっつの……