お兄ちゃんは悪魔サマ
保健室に近づいても、やはり俺には悪魔の気は感じられない。
それは保健室に入っても変わらずで、室内には八城はおろか誰もいなかった。
「おい、紗香はここで何か感じるのか?」
「……誰かが魔界に行ったみたいですね」
「魔界っ……!?って、お前そんな事は解るんだな。肝心な事は何も知らねぇのに」
俺が呆れたその時、携帯から着信を知らせる歌が流れ出す。
ズボンの右ポケットからそれを取り出し確認すると、電話は唯からだった。
「もしもし?唯?」
『尚哉、お前どこだ?』
「げっ、兄貴!?何で唯の携帯からなんだよ!」
『唯からなら直ぐに出るだろうと踏んでだ。それよりまだ着いてないのか?』
俺は保健室に居るとだけ伝えた。魔界云々は後回しで、今は唯の事だ。
「紗香、今からここに兄貴と一緒に唯が来る。そこで唯の残りの時間を見て欲しい」
「解りました」
俺は紗香を机の上に置く。
持ったままだと絶対変に思われるだろうし。
動かなきゃ少しリアルなぬいぐるみで、充分通用する。
唯と兄貴を待つ間、やけに鼓動は速くなっていた……