お兄ちゃんは悪魔サマ
他人の命の最期を知るのですら、こんなにも緊張する。
それが自分だったらその恐怖に耐えられるだろうか……?
それを唯は自ら知った上で、陵の為に命を懸けようとしている。
やっぱり唯はすげぇや……
いや、唯だけじゃなくてどこまでもお互いしか見てない唯と陵の2人が……かな。
パタパタと廊下を走る音が聞こえて、唯と兄貴が保健室に入って来た。
「尚哉っ!何だってお前はこんな所にいるんだよ!!」
「悪ぃ。紗香が何か感じるって言うから……」
「さやか……?」
突然の知らない名前に、唯が疑問を抱く。
やべ……普通に言っちまった。
ちゃんと計画練ってから紹介するつもりだったのに……
兄貴はバカにしたような呆れたような表情をしている。それが無性にムカつく……
「尚哉くん。さやかさんって?何か感じるってどういう事……?」
仕方ない。紗香は紹介しちまおう。唯の残りの時間はまず俺が聞いてからだ……
「紗香、元に戻っていいぞ」
「はぁい!」
突然現れた紗香に、唯は眼をぱちくりさせていた。
兄貴はドアにもたれ掛かって、そんな唯を見ていた。
唯を見る兄貴の表情は柔らかい。
報われない恋してんだな。でもそこまで思いやれる相手がいるって羨ましいかも……
それにしても、紗香はちゃんと唯の時間を把握したのか?