お兄ちゃんは悪魔サマ
私はその場に立ち尽くしたまま、その影が近づいてくるのを眺めていた。
「唯っ!!」
「お兄ちゃん……」
お兄ちゃんはすぐ側まで来ると、私をきつく抱き締めた……
「このバカッ……!心配させやがって……」
「ちゃんと書き置きしてきたでしょ?」
「あんなんで解るか!!俺はてっきり自殺でもするんじゃないかと……」
痛い位に強く抱き締められて、お兄ちゃんがどんなに心配してくれたのかが伝わってくる気がした。
しかもこんな所まで……
もしかして飛んで来たの……?
「お兄ちゃんっ!!パワー……エネルギーは?大丈夫なの!?」
「あんま大丈夫じゃないかも……さすがにこの距離はキツかった」
そう苦笑いを浮かべるお兄ちゃんの顔は、心なしか青ざめて見えた。
この場所は家から少し離れてるし、近くに道路もない。
私はお兄ちゃんの腕をほどくと、両手でお兄ちゃんの顔を引き寄せてキスした。
そこに躊躇いなどは存在しない。
「っ!?」
お兄ちゃんは驚いてたみたいだけど、少しすると手が私の背中に回されてキスが触れるだけのものから、より深くなる……
このまま時が止まればいい……
何度そう思っただろう。
そっと目を開けた私の瞳に、流れ星が映る。
それは、容赦なく時が流れる事を私達に見せつけているかのようだった……