お兄ちゃんは悪魔サマ
ホッとして、ようやくお兄ちゃんがジタバタともがいているのを発見……
ザバァッと勢いよく湯船から出たお兄ちゃんは、咳込んでいた。
「あ……ごめんね、お兄ちゃん。つい……」
「ゲホッ、ゴホォッ……ぜぇっぜえっ……ゆ、唯は俺を殺す気か?」
「……もう死んでんじゃん」
「…………まぁそれはそれだ」
お兄ちゃんはびしょ濡れになった髪をかきあげながら、息を整えていた。
その仕草に、ちょっとだけドキッとしたかも……
「悪魔でも苦しいものなの?」
「基本は普通の人間と感覚は変わんない。怪我したら痛いし、苦しくもなるし、下手すりゃ消えるしな。人間より少し頑丈で少し特殊ってだけ」
「そっか…。悪魔ってイメージだとさ、もっと悪いことしてていろいろ人間離れしてる感じだったんだけどなぁ」
「実際にそういうヤツもいるし、人間と同じで悪魔だとか天使だとか言っても一括りに出来るもんじゃねぇって事」
そうだよね……
悪魔だって人を助ける為に自分のすべてを賭ける悪魔がいれば、復讐目的の悪魔もいるって言ってたもんなぁ…
「生きてても死んでも悩みって尽きないのかな…」
私がポツリと呟くとお兄ちゃんは私に軽く抱きついて、右手で頬を撫でた。
「そんな事より、今は自分の心配してろっての。怖いんだろ?でも俺の為に気ぃ張ってんだろ?」
「お兄ちゃん……」
私は溢れそうになった感情と涙を必死で抑えた……